ずっとヴィーガン暮らし

薬草学の母ヒルデガルトに憧れて植物療法を学んでいます

漫画という媒体の可能性を改めて感じたこと

 今日は普段漫画にあまりなじみがない私が、ある漫画を読んで感じた漫画という媒体の可能性について考えてみたいと思います。

 

先日ヴィーガンの人たちのインタビュー動画をご紹介しましたが、その中の一人が「ある漫画を読んでヴィーガンになった」と語っていたのです。彼女は実はチーズ大好き人間だったけど、漫画の中で描かれる乳製品産業の現状を知り「苦しみは食べない」とベジタリアンからヴィーガンになったそうです。

 

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ひとりの人間をヴィーガンに変えてしまうきっかけを作った漫画。私はどうしてもその漫画を読んでみたくなり、購入しました。

 

 タイトルは「世界を変えたくて僕を変えた」です。

 

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いやぁ、驚きました。そして泣きましたよ。かなりいろいろなことが凝縮されて1冊の漫画の中に詰め込まれている。絵があるからこそ内容が大変わかりやすく、言葉だけで説明されるより、心に響く効果があると感じました。

 

主人公は小学5年生の男の子「大地」くん。大地くんのお母さんは働いています。大地くんは家で一人こたつに入り、TVゲームをしたり、豚丼を食べたりしているうちに寝てしまいます。そこに子豚の花ちゃんがやってきて・・・。

 

大地くんが子豚の花ちゃんを通して、肉食の背景や現状を知っていくなかで、少しずつ生き方が変わっていき、はじめはベジタリアンに、やがてヴィーガンになっていく物語です。

 

私がいいなと思ったのは、彼が自分で納得していろいろ実践し、迷い、まわりの人との関係に傷つきながらも少しずつ変わっていったところです。それはヴィーガンになった人が誰しも経験する道だからです。

 

お肉をやめたいと言ったら、お母さんに

成長期なんだからお肉は必要なのよ。貧血になったってお母さん知らないからね!」

と言われ、それならと自分で菜食弁当づくりに挑戦したり。

 

サッカー部の部活で、先生が差し入れに豚まんを配った時、友達から

 

「大地ってさ、肉食べないんだって?マジかよ、信じられねー」
「おまえ、植物だって生きてんだぞ、植物と動物差別すんのな」
「せっかく先生が買ってくれたんだし、感謝して食べればいいと思うよ」

 

と言われ、無理して豚まんを食べてしまい、自己嫌悪いっぱいで帰宅。子豚の花ちゃんの目を見ることができません。そんな葛藤も描かれています。花ちゃんは悲しくて泣きながらそっと出ていきます。

 

 

主軸は大地くんの成長物語ですが、タイトルが「世界を変えたくて僕を変えた」とあるように、作者の「世界を変えたい」という気持ちをかなり盛り込んだ内容になっています。

・肉食の歴史
・動物実験の現状
・タンパク質神話
・菜食の有名人たち
・プラントベースの食事
・畜産と地球温暖化の関係

 

そして牛乳については先日私が取り上げたことと同様の話が出てきます。「スポック博士の育児書」の影響や「生物学的に離乳をしたら二度とおっぱいを飲まないのが常識なのに」というような。

 

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人に何かを伝えたい。その想いが強ければ強いほど、言葉が過剰になってしまうことがあります。気持ちが先走ってしまうからです。

 

そして時にそれは逆効果になる。受け取る方はその熱量を不快に感じるからです。つまり温度差。ある人にとっては最重要事項で喫緊の課題でも、相手にとっては別にそれほどでもなかったりする。

 

今回ご紹介したこの漫画はメッセージ性が強く、かなり悲惨で残酷な動物虐待の描写があるにもかかわらず、読後感はさわやかです。私はこれは漫画という媒体のなせる業だと感じました。

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ユーモアたっぷり

わかりやすさ・・説明的になりがちな内容を絵で擬人化

インパクト・・・効果的なアップや擬音語

ユーモア・・・ ・押しつけずワンクッション置く

 

「世界を変えたくて僕を変えた」このタイトルはすなわち「世界を変えたいなら、まずは自分を変えることから」と言うことでしょう。「人を変える」なんておこがましい上から目線ではなくて。

 

みんな多かれ少なかれ、世界がもっとよくなればいいなと感じているはずです。でもその「変えた方がいい」と思っているポイントは人によって違うかもしれない。だから押しつけられるのは誰だって不愉快でしょう。

 

この漫画は内容はすごく濃いですが、語り口はユーモアもありやわらかです。そして何よりわかりやすくて読みやすい。漫画ってすごいなと改めて思いました。