ずっとヴィーガン暮らし

薬草学の母ヒルデガルトに憧れて植物療法を学んでいます

たぶん種を蒔いておくだけでいい

今日は昔のお話です。1996年の夏。私は病院のベッドにいました。慢性的に病んでいた股関節が悪化し、痛みで一歩も歩けなくなり、骨盤を切って股関節に被せるという手術を受けたのです。

 

2ヶ月間の入院生活はやっぱり大変でした。最後の方は車椅子になったけど、それまではずっと寝たきり。手術した脚を動かさないように特別な機械がベッドに取り付けられ、そこに脚を吊ったままです。寝返りもできないし、トイレも食事も寝たままでした。

 

できることと言ったら、本や雑誌を読むことぐらい。

 

ある時、雑誌にイギリスのコッツウォルズ特集が載っていました。若い時に1年間イギリス生活を経験していたので、懐かしさもあり夢中で読みました。

 

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美しいコッツウォルズの風景

そこで紹介されていた「フォス・ファーム・ハウス」というB&Bが、それはそれは素敵だったんです。

 

客室が2つの小さなB&Bですが、インテリアはすべてアンティーク家具。天蓋ベッドにはアンティークレースがかけられ、バスタブも洗面台も白い陶器にゴールドの蛇口、キッチンにはアンティークのホーローが並んでいました。

 

「うわぁ、なんて素敵なの~、素敵すぎる!」

 

すっかり魅了された私は、病院のベッドの上で「いつか絶対ここに泊まりたい」と強く思いました。

 

退院し、松葉杖をつきながら仕事に復帰したら、もうそんなことを考える余裕もなく、仕事に子育てにと、目まぐるしい日常生活に埋もれていきました。

 

ところが、予想もしていなかったことですが、6年後の2002年に夫の仕事の関係で家族でイギリスに住むことになったのです。

 

翌年の2003年、念願のコッツウォルズ旅行に行くことになり、ドキドキしながらあのフォス・ファーム・ハウスに電話をかけて予約しました。

 

そして実際に行ってみると、そこはまさにあの雑誌で見た通り、まるで物語にでも出てくるようなアンティークに囲まれた世界でした。

 

あまりに素敵だったこと、そして入院中に脚を吊られながら食い入るように見た、あの異国のB&Bに今実際に来ていることに興奮し、ほとんど一睡もできなかったのを覚えています。

 

オーナーのキャロンさんはとても気さくな方で、私が初めてここを知ったのが、病院のベッドの上だったこと、いつか来たいと願ったことを話すと「すごいすごい、本当に来てくれるなんて」と一緒になって喜んでくれました。

 

今回ウィキを調べて初めて知ったのですが、このフォス・ファーム・ハウスは1992年に日本の旅行者が選ぶベスト宿泊施設賞に選ばれていました。またキャロンさんは駐日英国大使館を通じて皇居に招かれ、そこで紅茶とスコーンをふるまったそうです。

 

ja.wikipedia.org

 

 また「きんいろモザイク」という漫画の舞台となったらしく、アニメ化で人気に火が付き、今では日本から聖地巡礼に訪れる旅行者が後を絶たないとか。

 

全然知らなかったです。私が憧れたあのB&Bが今では聖地になっているなんて。その漫画読んでみたいです。

newsphere.jp

雑誌で初めて見てから実際に行くまでの7年間。特に何をしたわけでもありません。よく言われるように、ヴィジュアライジングして潜在意識に落とし込むとか、全くしていません。

 

それでも結果的に行くことができた。今思えば、執着しなかったのがよかったのかなと思います。

 

もちろん、強くコミットして夢を次々に現実化していくやり方は素晴らしいし、否定するつもりは全くありません。

 

ただ個人的には、人生は思いもよらなかったことが起こる方が、楽しい気がしています。「ああ、あの時蒔いたあの種が、今頃になってようやく咲いたんだなぁ」と。

 

願いは叶ってもよし、叶わなくてもよし。今叶わなくても、そのうち忘れた頃にギフトのようにやってくるかもしれないから。