ずっとヴィーガン暮らし

薬草学の母ヒルデガルトに憧れて植物療法を学んでいます

映画「82年生まれ、キム・ジヨン」を観ました!

韓国映画「82年生まれ、キム・ジヨン」が日本でも上映開始!

 

公開初日の朝一番で早速観てきました。小説を先に読んで共感していたので、どんなふうに映画化されているのか、すごく楽しみでした。

 

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小説は韓国で130万部を超える大ベストセラーになり、22か国・地域での翻訳も決定しているそうです。日本でも16万部突破の異例の大ヒット。なぜこんなに共感を呼んでいるのか、NHKでも特集で取り上げられました。

 

私も初めてこの小説を読んだとき「これ本当に韓国の話?日本の話じゃない?」と感じるほど、まるで自分が体験したことがそのまま描かれているような錯覚を覚えました。

 

読まれた方も多いと思いますが、外国の話なのにこれほど「あるある」が多いのも珍しい。それほど現代社会における女性の生きづらさは、ある意味普遍的なテーマになり得るということなのでしょう。

 

 


82年生まれ、キム・ジヨン

 

韓国の姓で一番多いのがキムで、82年生まれの女性で一番多い名前がジヨンだそうです。作者がこの物語の主人公に一番ありふれた名前を象徴的に付けたのは、主人公が体験したことは特別なことじゃないという意図なのでしょう。

 

ネタばれになるので詳しくは書きませんが、簡単にストーリーを紹介します。

「結婚・出産を機に仕事を辞め、育児と家事に追われるジヨン、常に誰かの母であり妻である彼女は、時に閉じ込められているような感覚に陥ることがあった」

 

キャリアの中断やワンオペ育児で、少しずつ心が病み、壊れていき、本人は無意識・無自覚のままおかしな行動も現れるようになります。

 

精神科医とのカウンセリングを通して「なぜジヨンの心は壊れてしまったのか」が少しずつ明らかになっていくのですが、ジヨンが子ども時代・少女時代から感じ始める女性としての生きづらさは、ジヨンの母にまで遡って描かれます。

 

ジヨンの母も少女時代には、男の兄弟を大学へ行かせるために、中卒で工場で働いてお金を稼いだり、結婚してからは男の子がなかなか授からず、続けて娘ばかり産んだので義母に泣いて謝ります。

 

そんな母親は自分の娘には同じ思いをさせたくないと願い、姑は嫁は自分と同じ苦労をするのが当たり前だと思う。だからジヨンの夫がジヨンのために育児休暇をとろうとすると、息子の出世を嫁のあんたが邪魔するのかと猛反対し、ジヨンの再就職はかないません。

 

小説で私が一番びっくりしたのは「ママ虫」という言葉。子育てをしている主婦が子連れで外でコーヒーを飲んでいたりすると「ダンナの給料で生活しているくせに、まったくいい御身分だな」といった軽蔑するニュアンスで出てきます。

 

映画では、スタバのようなコーヒーショップにベビーカーと一緒に入ったジヨンが、飲み物を床にぶちまけてしまい、「ママ虫」と言われます。会社員たちは、昼休憩ぐらいゆっくりしたいのに、子どもが大泣きしてうるさいし、ベビーカーがじゃまだし、子連れでこんな所に来るなよ、と露骨に迷惑そう。

 

ママ虫については、作者がこちらのインタビューで語っています。

news.yahoo.co.jp

 

ただ最近は制度や手当の改善などで、女性の方が逆に優遇されていると感じる若い男性が増えていて、従来の家父長制的なミソジニー(女性蔑視・女性嫌悪)ではなく、新たなミソジニーが生まれ、ジェンダーの問題は複雑化しているようです。

 

 

imidas.jp

女性の生きづらさをテーマにした本は、こちらもおススメです。フランスで120万部突破。32言語に翻訳決定。


三つ編み

 

女性の立場からすると、この本が大ヒットし、これだけ共感を呼んでいるのは当然だと感じますが、果たして男性はどう感じているのか大変興味深いです。K-POPアイドルがこの本を読んでいると言っただけで炎上したり、自分の彼女には読んでほしくないと思っている男性もいるとか。

 

この本は三世代にも渡る根深い社会問題を、じわりじわりと浮き彫りにしているため、ドラマチックな事件やストーリーの展開はありません。どちらかと言うと日常が淡々と描かれています。映画もエンターテインメント的には盛り上がりは欠けるかもしれません。でもその分リアリティーがある。

 

特に心が壊れてしまった娘を思う母を演じたキム・ミギョンさんが最高でした。自分と同じ苦労をさせまいと「女の子だから」という子育てはしなかったのに、結局は「女だから」という壁にぶつかって娘は病んでしまった。悔しくてやりきれなくて寝込んでしまいます。その後、ダンナのある行動で怒りが爆発するのですが、そのシーンがよかった~。

 

それでもラストは希望の持てる形で描かれています。文学や映画は国境を軽々と越え、理屈ぬきで心に直に届くからいいですね。