メディカルハーブを勉強していると、必ず出てくるのがセイヨウシロヤナギ。西洋医学はここから始まったと習います。一体どんな植物なんでしょう。アスピリンの起源植物と言われるので興味津々です。
伝統医学から近代医学へ
人類の歴史を見ると、長い間人間は薬草とともにあったことがわかります。
「BC400 年頃、古代ギリシアの医師ヒポクラテスは体液病理説を唱え400種類ものハーブを処方した。」
「1世紀頃、古代ローマの医師ディオスコリデスはマテリア・メディカ(薬物誌)を著し、600種類ものハーブを取り上げた」
このような歴史が中世の修道院医学につながっていき、薬草学の母と言われるヒルデガルトが登場します。
またインドではアーユルヴェーダが、中国では中国伝統医学が、いずれも薬草を使った伝統医療として発達しました。
ハーブには多様な成分が含まれていて、様々な作用を持ちます。たとえばリンデンには鎮静作用と利尿作用があります(リンデンのハーブティーは質の高い睡眠をもたらしてくれるけど、利尿作用でトイレにも起きてしまう)
19世紀になると、ハーブに含まれている多様な成分から特定の成分だけを抽出できるようになりました。
1806年 アヘンからモルヒネの抽出に成功
1827年 セイヨウシロヤナギやメドースイートからサリシンを分離
1860年 コカの葉からコカインが分離
1899年 サリシンからアスピリンの化学合成に成功
医薬品は病原菌を狙い撃ちするという意味で「魔法の弾丸」呼ばれ、医学は植物療法から医薬品中心の近代医学へと大きく舵を切ることになります。そして伝統医学は一旦廃れてしまうのです。(参考 日本メディカルハーブ協会テキスト)
セイヨウシロヤナギを探して
日頃から自然の中で暮らしている方や植物に詳しい方なら、名前を聞くだけでご存知なのかもしれませんが、私はセイヨウシロヤナギと聞いてもさっぱり。どこに行けば見れるの?そもそも日本にあるの?ぐらいな感じです。柳ならともかく「西洋」がついてるからね。
ところが、ある大学内にあるという情報を得たんです。さっそく連絡してみたところ、一般人でも入れるということで、ドキドキ・ワクワクしながら行って来ました。
これがセイヨウシロヤナギか~。とうとう見つけましたよ!
大学の端っこにあって、広いキャンパスをぐるぐると歩き回りました。ちょっと離れたところに学生さんたちがいたけど、あのおばさんは何をやってるんだろうと思われたかも。一人にやにやしながら写真を撮ったり、近づいていろんな角度から眺めたり、葉っぱの匂いをかいだり、行動が怪しい。
ご丁寧に解説まで。聖書にも登場していたんですね。秋の風のなかを葉っぱがそよそよと揺れて、心地よい。大昔からある植物が今目の前にあると思うと、なんだか感無量。
古代ローマの医師ディオスコリデスの著書には「痛みや熱に用いた」とあり、アメリカ先住民は発熱、頭痛、筋肉痛などに用いたというセイヨウシロヤナギ。まさにアスピリンのように長い間使われてきたんですね。
今はすっかりアスピリンに取って代わられたとばかり思っていたら、 慢性的な頭痛や背痛に悩まされている人がアスピリンの代わりに使うというじゃないですか。人工的に合成されるアスピリンより体に優しく作用すると粉末カプセルやエキス、お茶まで売っている。
なかには加工されていないセイヨウシロヤナギの樹皮をそのまま噛む人までいるそうな。
驚きました。知らなかったのは私だけでしょうか。この前頭痛に苦しんだのに、セイヨウシロヤナギのお茶をあの時試したかったなぁ。
ホワイトウィロウ/セイヨウシロヤナギ バーク カット CUT オーガニック 100g カリス成城
アスピリンが化学合成されてから一気に近代医学が進み、一度は廃れてしまった植物療法ですが、最近になってまた少しずつ見直されてきたのでしょうか。
紀元前からずっと伝統的に使われてきた薬草の世界。近代医療との統合医療が進み、症状に応じて選べるようになったらいいなと思います。