遅い、遅い、いくらなんでも遅すぎる。今年はどうしちゃったんだろう。庭の金木犀が一向に咲く気配を見せない。もう10月も終わりだというのに、やっぱり異常な酷暑の影響なんだろうなと心配していたら、10月27日にやっと開花した!こんなに遅いのは初めてのことだ。

毎年低いところばかり切って部屋に飾ったりしていたからか、すっかり背が高くなってしまい、もう手が届かない。空に向かって気持ちよさそうに伸びている。咲くのを待ち焦がれていたので、とてもうれしい。

秋の恵みを少しだけいただいて、金木犀のフローラルウォーターやシロップ、チンキ作りなどに励む。金木犀の花は古くから生薬として使われていて、胃炎・低血圧・不眠・歯痛・風邪・痰切りなどに効果があるという。頼りになる自然ぐすりだ。
まずはチンキ作りから。お花を軽く洗って、ペーパータオルで水切りをし、茎や枯れた花を取り除く。これが細かい手作業ですごく大変なんだけど、できるだけがんばってみよう。

消毒したガラス瓶に、金木犀の花を入れ、上からウォッカを注ぐ。

毎日数回振って、1ヶ月ぐらい置く。最後に漉したら完成だ。チンキはうがいにも使えるし、マスクスプレーにも応用できるので、これからの季節風邪予防に活躍しそうだ。香り成分には鎮静作用があり、寝る前にお白湯に数滴たらして飲んだら、体も温まり安眠効果も期待できる。

さて、余ったお花でジャムを作ることにした。いつもはてんさい糖で煮るのだけれど、どうしても色が茶色っぽくなってしまうので、今回はグラニュー糖を使ってみよう。ペクチンも入れてぷるぷるに仕上げる。

砂糖は控えめにし、仕上げにレモン汁を加えてすっきりしたジャムに。ヨーグルトにかけたり、紅茶に入れても美味しい。やっぱり香りが最高で、この季節だけ味わえる贅沢なジャムに仕上がった。

1年に1度だけのお楽しみ、金木犀の家仕事を終えてほっと一息。金木犀のお花は個人的に緑茶と相性がいいと思っている。一緒に急須に入れるだけで美味しいブレンド茶ができるけど、見た目も楽しみたいならお花を浮かべるときれいだ。

いつも不思議に思うことがある。うちには庭の東西の角に2本の金木犀の木があるのだけど、早咲きの年も、今年みたいにかなりの遅咲きの年も、ある日突然まったく同時に咲き始めるのだ。息ぴったり、阿吽の呼吸、まるで「明日咲こうか」と示し合わせているかのように、寸分の狂いもない。
長年一緒に暮らしている家族だって体調はばらばらなのに、こんなに見事に開花を合わせられるものなのかな。日当たり具合だって違うはずなのにすごすぎる。「そろそろだね」「いや、もう少し待とう」なんて、植物同士で会話しながら最高のタイミングを計っていたりして。それもあり得ると密かに思っている。
庭の金木犀との付き合いも25年になるが、今年は最遅記録だ。そして明らかに香りが弱い。いつもなら部屋に数輪飾るだけで、これでもかというぐらいいい香りが漂っていたのだけれど、今年は控えめだ。人間だってあまりの酷暑でバテバテだったのだから、植物だってきっと参っているのだろう。
それでも寝室に一枝飾っておいたら、夜にはまるで香りの楽園にでも迷い込んだよう。あんな小さな花びらのどこにこんな魔法が隠されているのか。うっとりと香りに包まれて朝までぐっすり眠ることができた。
開花期間がたった1週間という金木犀。この先の気候変動がどうなるかわからないけれど、秋のささやかな至福の時がこれからも続くことを願うばかりだ。