聖ヒルデガルトはライアーを弾いていたのではないかと言われている。初めてそれを聞いた時は、ライアーって何、と思った。ハープに似ているけど、ハープとは似て非なる楽器だと言う。
そんな時、シュタイナー教育では子供たちがベビーライアーを弾いていると知り、俄然興味がわいた。ヒルデガルトからシュタイナーへ、歴史は流れ受け継がれていく。
そして、小さな花びらの形の楽器リトルミンストレルに出合ったのが去年の春。この歳になって新しい楽器を始めるのはちょっと無謀かなと思いつつ、ワクワクが勝って購入。
可愛さに惹かれて購入したけど、1年経っても人前で披露できるレベルではない。それでも美しいフォルムと音色に何とも言えない安らぎを感じる。ポロンポロンとするだけで、心の奥まで癒してくれる小さな友。
聖ヒルデガルトは薬草学の母として知られているが、音楽家としての功績も大きい。世界最古の典礼劇オペラを始め、聖歌が全77曲残されている。彼女の曲を演奏したCDも数多く発売されていて、YouTubeなどでも見ることができる。
独特の音階は初めて聴く響きで、なんとも不思議な世界を体感できる。
楽譜ってあるのかな、77曲の中で1曲でもマスターしたいなと思っていたら、とねりこねこさんがヒルデガルトの曲をアップされていた。歌はたくさんあるけど、ライアー演奏はとても珍しい。ありがたい。
今は楽譜も1曲ずつネットで買える時代だとは知らなかった。データをダウンロードし、自宅でプリントアウト。欲しいと思ったら5分で手に入る。アナログ人間には衝撃的な便利さで怖いくらいだ。
楽譜はこちらで購入しました ↓
リトルミンストレルは全部で11弦。弦の数が少ないので弾ける曲に制限があるけど、シンプルな曲ならなんとか弾ける。右手でメロディーを弾き、左手で音階に合ったコード内の音を弾けば自然と伴奏にもなる。
しばらく弾いてなかったら微妙に音が変だった。調弦から始めないといけない。ピアノとリトルミンストレルの音を比べながら自分の耳を信じて調弦していく。弦を締めたり緩めたり、ちょっとの差で音が変わってしまうから繊細な作業。
曲は「オ・フロンデンス・ヴィルガ」(花咲く枝)
楽譜を見ると、低いソの音がある。リトルミンストレルは低いラまでしか弦がない。どうしよう。そしてメロディーに♭シがある。♭の音は出せないから、そこだけ口ずさむか。
それでも右手でメロディーラインを弾いて、左手で伴奏のように低い音を重ねると、いい感じだ。中世の教会ではこんな厳かなメロディーが響き渡っていたのかな。人々はどんな想いで歌っていたのか。
外は雨。雨の音にライアーの音が共鳴して、現代と中世がつながる不思議な感覚。
自然界からの雨の恵みが身体に染み渡り、浄化されるようだ。弦をはじく自分の指先の感覚、コロンとしたライアーの感触。雨の音。目を閉じると全てが一体となり、自分が地面に沈むようでもあり、宇宙空間に浮かぶようでもあり。
やっぱり雨の日は練習日和だ。