ずっとヴィーガン暮らし

薬草学の母ヒルデガルトに憧れて植物療法を学んでいます

韓国初のヴィーガン漫画がついに日本上陸

アマゾンで予約し、今か今かと発売日を楽しみに待っていた本が、ついに手元に届いた。ヴィーガンについて描かれた漫画で、翻訳者によると韓国初のヴィーガン漫画だという。

 

「ヴィーガンになった。そして私の世界は大きく変わった。」

 

こんな書き出しで始まるこの漫画、ヴィーガンになったが故に体験する軋轢や、戸惑い、周りの反応など、わかるわかると共感し、また時に読むのも辛い所もあったが、著者の気持ちがまっすぐに伝わってきて、一気に読んでしまった。

 

全232ページで大変読み応えがあった。

内容は「とあるヴィーガンのヴィーガニズム日記」とあるように、ひとつの連続した物語ではなく、主人公アメリ(著者自身を投影していると思われる)の体験談や思いが独立した34のエピソードとして語られる。そこにスペシャルエピソードとして、ヴィーガニズムにまつわる話が盛り込まれている。

 

著者のボソン氏はほぼ1年間、漫画を描く作業をしながら、多くの本や資料を見て勉強したそうだが、スペシャルエピソードは14にも及び、肉食と環境、毛皮、漁業と生態系、工場畜産の問題など、データも添えて詳しく解説している。

 

特に、生きている動物がどのように人間のための食肉になるのか、その残酷、悲惨なプロセスを卵用鶏編、乳牛編、豚編と分けて詳しく描写している。私もアニマルライツセンターの動画で知っていたはずなのに、改めて漫画で読んでみても目を覆いたくなるような現状だ。

 

ポールマッカートニーの言葉も紹介されていた。

「もしも屠殺場の壁がガラスでできていたら、人々はみんな菜食主義になったでしょう」

 

ヴィーガニズムに出合う前は動物の一生には無関心だったというボソン氏は、自分の世界が大きく変わったという。

当然だったことが当然ではなくなり、見えなかったものが見えるようになります。ヴィーガニズムの蓋を開けるということは、昔からそうだった、慣れ親しんだ現象の転覆を試みることです。

 

韓国でもヴィーガンは拡大中のムーブメントで、ヴィーガンレストランやカフェも増え、コンビニでもヴィーガン弁当が買えるそうだ。そんな韓国だから、SNSで発信されていたこの漫画が書籍として形になり、日本でも翻訳されるまでになったのだろう。

 

いくつか印象的だったエピソードをご紹介したい。

・エピソード7

お絵描き教室で美術講師として働いていたアメリは、教室長の先生に「今日は動物園の絵を描くよう指導してください」と言われる。動物園に反対しているとは言えず、園児たちに絵を描かせ、重い心でその絵を見ると、檻の中に閉じ込められている動物たちはみな笑顔だった。

 

アメリは、子供たちには鉄格子に閉じ込められているライオンも笑顔に見えるんだと、その無感覚にショックを受ける。そしてかつて自分もそうだったと気づく。

 

・エピソード17

アメリは5年間うつ病を患っていて精神科に通っている。相談はいつも先週あったことから話すのだが、「ヴィーガンになりました」と言ったら、お医者さんが歪んだ微笑みを浮かべて、アメリをからかいはじめた。

 

うつの治療に全く役立たない話をした医者の冷たい表情に鳥肌が立ち、何も言えずに帰った。ヴィーガンになるということは、こういう冷たい視線も受け入れなければならないと知った。

 

エピソード22

テレビでグルメ番組をやっていた。その日の美食テーマは「肉の皇帝、牛肉」で、出演者たちはそれぞれの牛肉愛を語り合った。ヒレが好き、肩ロースが好き、ハラミが、、。

 

血の痕跡が一つもないスタジオで、生命の死について、高級か否かを舌つづみを打ちながら話しているのにぞっとした。

「牛は一切れずつの肉のかけらになってから、人々にやっと愛される」

 

 

この本をアマゾンで見つけた時、すごくびっくりした。なぜなら2年ほど前に、私は韓国語の原作を手にしていたからだ。韓国語を10年ぐらい勉強していて、時々韓国書籍を扱う専門店のサイトを覗いていた。

 

そこでたまたまこの漫画を見つけ、内容がヴィーガンということで興味を持った。韓国語の小説を読むのはハードルが高いけど漫画なら読めるかも、と安易に考えて購入したものの、熱心に読んだのは最初のほうだけで、そのままになっていた。ああ、情けない。

 

だから「もう翻訳本が出たのか!」とすごくびっくりした。それだけ韓国で話題になっているということだろう。翻訳者によると、韓国語版はリサイクルのことを考え、表紙にあえてコーティングを施さず、本文に使われた紙の6割がリサイクル紙だったそうだ。言われてみれば、韓国語版は手触りも色合いもより素朴な感じがする。

ボソン氏が繰り返し言っていたことは、完璧を目指す必要はないということだった。ヴィーガンを志しているのに、私の実践は足りないと自分を責めたり、卑下したりしないこと。できる範囲で最大限に実践すればよくて、「ヴィーガン志向」という言い方をしていた。

 

この本は漫画ならではのわかりやすさでヴィーガニズムを解説しているので、ヴィーガン入門書にぴったりだと感じた。また感性の鋭さにドキっとさせられたり、知的な指摘に刺激を受けたりもした。

 

それにしても、2年前に出合っていたのに、私は何をしていたのだろうという感じ。コツコツ読み続けていたら、韓国語も上達し、ヴィーガン暮らしにもいい影響があったかもしれない。翻訳本を先に読んでしまったが、ずっとそばに置いておきたい、とてもいい本だった。

 

 

 

 

retoriro.hateblo.jp

 

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