日々ハーブティーを楽しみ、ハーブのブレンドに勤しんでいる私にとって、とても興味深い本に出合った。
「奇跡のハーブティー」(ジェイソン・ウィンターズ)
末期癌で医者から余命1年を宣告された著者が、ハーブを学び、ハーブを探し求め、自らブレンドしたハーブティーを飲み続けて癌を完治した実話だ。
彼は自らの体験をもとにハーブティーの会社を作った。本によると、彼の名前が付いた「ジェイソン・ウィンターズ・ティー」は、今や世界72ヵ国で6500万人以上が愛飲しているという。日本でもAmazonや楽天で普通に買えるので、ご存知の方も多いかもしれない。
「ハーブで癌が治った」という話は、胡散臭く感じる人もいるだろう。でもこの本に書かれているのは「ハーブがピンポイントで癌に効く」といった魔法の万能薬のような話ではなく、ハーブで体に溜まった毒素を流し、免疫力が正常に機能するようになれば、自己治癒力が向上し、病も自ずと治癒していくという実証なのだ。
内容を簡単にご紹介していこう。ジェイソン氏は46歳の時に首に癌が見つかった。癌細胞はすでに頸動脈を包み込んでいて手の施しようがなく、医者から余命1年と告げられる。
数週間に渡り放射線治療が続けられ、あとは癌摘出手術を待つばかりという時、隣のベッドの患者から健康雑誌を借りるのだが、そこにはハーブの記事が詳しく載っていた。北米の先住民族は独自のハーブ療法を持ち、命にかかわる重い病気も治してしまう等々。
中でも彼の心に響いたのが、アメリカ・インディアンを代表するチェロキー族に伝えられている言葉だった。
植物が存在しなければわれわれも存在しない。植物が吐き出したものをわれわれは吸って生きている。われわれは常に植物から学び続けねばならないのだ。
放射線治療で苦しみ、髪が抜け、やせ細った自分の姿を鏡で見て「地獄の住人ようだ」と感じた彼は「助からない患者になぜ手術をする必要があるのか」と、治療の方針に不信感を抱き始める。
もっと潜在的な自己治癒力を目覚めさせるものがあるのではと、ハーブの猛勉強を始める。そして「世界中には人間の歴史が始まって以来ハーブが存在し、人間のあらゆる病気を治し、心を癒してきた」ことを知る。人間とハーブの関係は有史以来の歴史を持っているのだ。
シュメール人は楔形文字でハーブについて書き、古代エジプト人は象形文字でハーブの処方を書いた。仏陀も2500年前に「体の弱いものはハーブを用いよ」と教え、医学の父と呼ばれるヒポクラテスは400種類ものハーブの処方を書き残した。
初めにハーブありき
これこそ真の道だと直感したジェイソン氏は、そこからハーブ治療の旅を始め、紆余曲折を経て、3つのハーブに辿り着く。
①ハーバリーン インドに伝わる腫瘍によく効くハーブ。仏陀が腫瘍を抑えるのに絶大な効果があると書き残したとされる。
②チャパラル・ティー アメリカ先住民が体を浄化するために飲んでいるもの。
③レッドクローバー ジプシーたちがさまざまな病気に効果があると飲んでいるもの。旧約聖書にも頻繁に登場する。
しかし、よいとされている3つのハーブを別々に飲んでいる時はなかなか効果が出なかった。ところが別々に煎じるのが面倒で、3つ一緒に煎じた時に奇跡が起こった。理由はわからないが「何か」が感じられたのだ。
あえて言えば、遠くから鳴る教会の鐘の音を聴くような感覚だった。
そして、そのブレンドハーブティーを飲み続けて3週間で、腫瘍が消えた。余命宣告から半年で癌は完治したのだった。
彼が末期癌から生還したという話は地元で話題になり、取材が殺到し、新聞に取り上げられ、家や会社に人が行列を作るので、会社を解雇されてしまったそうだ。欲しいという人がたくさんいるので、始めは無料で配っていたが、そのうち誹謗中傷を受けたり、儲け話をもちかけられたり、当局から圧力を受けたり。
彼からハーブティーをもらって、その効果に驚いた教会の牧師は「もし、君がこのお茶を人々のために広めないならば、君は怠慢の罪を犯すことになるよ」と言いつつも、次のように続けた。
でも、君がこのティーを広めたとしたら、権力によってとんでもない嫌がらせをされるだろうね。だって北アメリカの当局は、このティーのために年間数億ドルの医療ビジネスを失うことになるかもしれないのだからね。
それでも彼はさまざまな困難を乗り越え、ハーブティーを広めるという功績を残し、いろんな国から勲章を与えられている。世界統合医学連盟の後援者であり名誉会員を務める、英国のチャールズ皇太子(当時)からは感謝状が贈られた。「現代医学と代替医療の掛け橋をつくり、代替医療を法律で認めさせる仕事に力を貸してほしい」
私がこの本を読んでいいなと感じたのは、ハーブを現代医療に対抗する万能薬のようには書いていないことだ。もっと奥深い、人間が本来もっている自己治癒力を目覚めさせるきっかけとなるもの、潜在的な力に働きかけるものとして描かれている。
彼は、カンタベリーの枢機卿に連絡を取り「血をキレイにするハーブとして、一番多く聖書に登場するのは、なんというハーブなのか」を尋ねる。コーガン枢機卿は調査後「ヨーロッパで数百年間の歴史を持つレッド・クローバーに違いない」であろうと伝える。
このように、ある1つの症状に対処療法的に効くというより、体から不要な毒素を取り除き、自己治癒力を活性化させ、体全体を整えていくという考え方だ。有史以来、人間に寄り添って、それを助けてくれたのがハーブなのだ。
私もお試し用を買って飲んでみた。ウーロン茶ベースなので、ハーブティーに慣れていない人も飲みやすいのではないかと感じた。チャパラルはとても苦いということで、同じ成分が入っているセージに代わっているようだ。セージも大昔から聖なるハーブとしてよく知られている。