今週のお題「一気読みした漫画」
私が一気読みした漫画としてご紹介できるのは、これしかありません。TSUTAYAで全13巻を借りてきて夢中で読みました。
「にがくてあまい」(小林ユミヲ)
川口春奈さんと林遣都さんがダブル主演した実写版映画を先に観たのですが、その原作本ということでどうしても読みたかったのです。
こちらはその公式レシピ本。
ヒロインのマキは農家の娘なのに野菜嫌い、料理ができない、部屋は荒れ放題、でも仕事に燃えています。
そんなマキが、オーガニック料理を愛するヴィーガンで、モテモテのイケメン美術教師のゲイ、渚に恋をするお話です。
ひょんなことから出会った二人は成り行きで一緒に暮らすことになり、奇想天外な同居生活が始まります。マキの恋が進展することはありませんが、自然と友情も育まれていく素敵なお話です。
この漫画にはヴィーガン料理がなんと100種類以上も出て来るんです。そんな漫画、ほかにありますか?
そしてほとんどが自分のために作る料理ではなく、誰かのために作る料理として登場するのです。
毎日のちょっとした場面で囲む普通のご飯。誰かにいいことがあった時にみんなでワイワイ食べるお祝いのご飯もあります。
でも誰かが苦しんでいる時のご飯も多い。登場人物が自分の大切な人のためにご飯を作る。さりげなく、作ってあげたり作ってもらったり。そんな姿に感動しました。
疲れている誰かのために
高熱の誰かのために
食欲のない誰かのために
傷心の誰かのために
貧血で倒れた誰かのために
酔っぱらった誰かのために
入院中の誰かのために
私は若い時からずっと菜食なので、この漫画のように誰かと食事をシェアするような経験が圧倒的に足りません。ヴィーガン料理は自分で作って食べるしかないし、誰かに作ってもらうとしたら、ヴィーガンレストランに行くしかありません。
だからこの漫画を読んだ時、本当に羨ましかった~。登場人物みんなが野菜料理を作ったり作られたりしながら、楽しんでいるので。
決してヴィーガンを前面に押し出した漫画ではないし、とびきりオシャレなヴィーガン料理が出て来るわけでもない。いわば野菜だけで作った普通のご飯なのですが、それがとっても美味しそうで、野菜ってすごいなと思わせてくれます。
自然薯のとろろめし
炒り豆腐丼
かぶの葉の常備菜
お肉の代わりに野菜で作った料理は
油揚げ入り野菜餃子
春キャベツと車麩の回鍋肉風
高きびのキーマカレー
おしゃれな料理は
カルチョッフィ丼
ビーツのリゾット
スタッフドトマト
会話しながら作っている様子も描かれているので、読んでいてすごく楽しいです。すり鉢やフードプロセッサーなどの道具を使う様子、野菜を切る手先などが丁寧に描かれ、漫画を読みながら「へぇ、こんなふうに作るんだ」と目から鱗だったり。
食べながらのリアルな感想もどんどん出て来る。
レタス!なんでこんなに甘くておいしいの?火を通すとなぜ人格変わんの?
うんちくも時々出てきます。
アスパラガスってさ、刈り取られてもなお成長著しい元気な野菜なんだ。生きよう生きようとして呼吸をやめない。それゆえ立たせてうまく保存しないと自分で自分の劣化を早めてしまう
なるほどなと思ったセリフも
食欲がなくても口にできるものもいいけど、食欲を起こさせるもんの方がずっとパワー出そうな気がしない?
こう言ってスパイスたっぷりの、辛くて酸っぱいラッサムスープカレーを作るのです。
「にがくてあまい」と言うタイトルは料理のことだけではないようです。登場人物はみんな何か生きづらさを抱えています。それは過去のトラウマだったり、現在の人間関係だったり、マイノリティとして生きる故の辛さだったり。
苦い思いをすることもある毎日。そんな中で、誰かが作ってくれたご飯を一緒に食べると、食べる前よりはちょっと元気になっていたりする。ほっこりして体も心も癒されている自分に気づく。
そのご飯が心の支えになるぐらいの想い出になったり、時には生き方を変えるきっかけになったりもする。
全13巻を一気読みした直後は超舞い上がり、この漫画に出て来るヴィーガン料理を全部作るぞーと意気込んでいましたが、1年以上経つのに作ったのは2品だけ(汗)時々思い出してはレシピ本を眺めています。
新しく続編「にがくてあまいrefrain」も出ているようなので、またこの優しさ溢れる食の世界に浸りたいと思います。