もう10年ぐらい前でしょうか。「すみれノオト」という装丁の美しい本を読みました。23歳で夭逝した松田瓊子の作品集で、上皇后美智子さまが女学生時代に愛読されていたと知り、興味をもちました。
すみれが好きで、自らも「すみれ」という短編を書いた松田瓊子。清楚で、おだやかで、瑞々しい文章。それでいて凛とした強さをもつ松田瓊子の世界は、どこかすみれの花に重なります。
すみれはその可憐な姿からは想像もできないほどたくましく、生命力が強いと言われます。コンクリートの隙間から愛らしく顔を出していることもありますよね。
なぜ、急にすみれの話?
実はうちの庭になんとも愛らしい、ちっちゃなすみれが咲いていたのです。なんでこんなところに、と思うような石がごろごろしているところ。しかも季節外れのこんな冬に。
まるでそこだけ春のような輝き、妖精がいるかのようなオーラを放っていて、すみれの生命力と、それを感じさせない可憐な姿に感動してしまいました。
清楚で可憐なのに、強い。かのナポレオンも、ルイ14世もすみれが大好きだったと言うから、きっとすみれの魔法にかかってしまったのでしょうね。
そんなすみれの花ですが、自然療法の世界では古くから薬草としての顔を持っていました。
古代ギリシャや古代ローマでは、すみれを頭痛や二日酔い、視覚障害に利用し、医学の父、ヒポクラテスは抑うつ症、胆汁過多、胸部の炎症にすみれを勧めたそうです。
中世になると、すみれはキリストの謙虚さを象徴するとし、その象徴性と治療力から修道院の庭に盛んに植えられたそうです。(「花のもつ癒しの魅力」より)
「ヒルデガルトのハーブ療法」によると、聖ヒルデガルトはニオイスミレを使った2つのレシピを残しています。疲れ目に「ニオイスミレのオイル」と、うつ状態に「ニオイスミレのワイン」です。
不満と憂鬱に悩まされるときは、ワインにスミレを入れ、少しのガランガル、好みの甘さにするためのリコリスを入れたものを飲みなさい(「聖ヒルデガルトのヒーリングレシピ」より)
すみれにはサポニンと粘液が含まれているので、鎮咳・去痰の薬効があるそうです。喉のケアが必要な今の季節にぴったりですね。ヒポクラテスやヒルデガルトによればメンタルにもよいということで。
<ニオイスミレのワイン>
☆材料
・ワイン 500㎖
・ドライヴァイオレット 大さじ1
・リコリス 小さじ1
・ガランガル 少々
生のすみれは食用にも使えるので、理想的には「自分で庭で育てたニオイスミレを使って」といきたいところですが、まだまだ修業不足。ここではオーガニックのドライを使います。
リコリス(甘草)は名前の通りかなり甘いです。こちらも古代ギリシャの時代から咳や喉の痛みに使われていました。最強コンビですね。
こちらはヒルデガルト推奨のスパイス、ガランガル。発汗、健胃、強壮の作用があります。手に入りにくいので生姜でもOK。
ワインに入れたら、こんな感じ。うわぁ、可愛い!飲む前から癒されそう、これがすみれマジックか。
火にかけて煮たら、こんな感じ。花びらが十分に開きました。すみれの成分が浸透したでしょうか。
濾してから、リコリスとガランガルを加えたらできあがり。
この瓶に入り切らず、もうひと瓶分できました。普段アルコールを全く飲まないので、美味しいのかどうかもわかりませんが、寝る前にちょっとずつ飲んでみようと思います。
万葉集にも登場しているすみれ。飛鳥時代の薬猟(くすりがり)で摘まれたのでは、という話も読んだので興味が尽きません。
次回もすみれの話になりそうです(笑)