夏に時々見かける緑の楕円形の野菜「冬瓜」。食べたこともあるはずなのに、正直どんな味だったかよく思い出せない。野菜大好き人間の私には珍しく、冬瓜はあまり馴染みがなくて、印象の薄い野菜なのだ。
でも、夏野菜なのになぜ「冬」の字が入っているのか、ちょっと気になっていた。薬膳の本を見てみると、冬瓜は平安時代の薬物辞典「本草和名」にも記載があるくらい、古くから日本人に親しまれていたという。「ほてった身体を冷やしてくれる」「余分な水分を排出してくれる」等、なかなかの優れものらしい。
へぇ、そうなんだ。そんなにすごい夏野菜なら、今年はちょっと冬瓜料理にチャレンジしてみようかな、なんて思っていた矢先、偶然ある文が目に留まった。
あるかなきかの冬瓜の味も、人生経験を経て始めてしみじみと分かる。(「ニッポンの縁起食」より)
なるほど、冬瓜に味の特徴がないというのは、一般の共通認識なんだな。だから印象に残らなかったんだ。だけど、人生経験を積んだ人には、その味がしみじみと分かる。食べる人の方が試されているようで、なんか不思議な野菜だ。
俄然興味が出てきて、さっそく冬瓜を買って来ました!すごく大きいのもあったけど、取り合えず中ぐらいのを選んでみた。たまたま無農薬のものが売っていてラッキー、皮まで使えそうだ。

中を切ってみると、ずんぐりむっくりした外側からは想像できないくらい瑞々しい感じだ。えーっ、なんかたまに食べる黄色い瓜とそっくり。種があって、ワタがあって、メロンとかゴーヤとか、当たり前だけど同じウリ科の植物はみんな似ているんだなぁ。

まずは煮物から。冬瓜を昆布だしで煮て、梅干しで味をつける「冬瓜の梅煮」をやってみることにした。その前にひとつつまんで食べてみたら、味が全くない!甘くて爽やかな黄色い瓜とは大違いだ。

そして、皮も捨てずにきんぴらにすると美味しいらしいので、私も真似してみることにした。千切りにして、ごま油で炒め、醤油・みりんで味をつける。私は塩麹も入れてみた。

こんな感じにできあがりました。

きんぴらは味付けも濃いめで、しゃきしゃきと歯応えもあり、ご飯のお供にぴったり。皮は硬いので、気になる方は一度茹でてから炒めた方がいいかもしれない。梅煮のほうはとっても上品な味に仕上がった。なるほど、冬瓜が淡泊だからこそ昆布や梅干しの味が染み込むんだなと思った。
もう一品、和食の本から「冬瓜汁」を作ってみた。こちらも昆布だしで冬瓜を煮て、後から椎茸と針生姜を加えて更に煮る。最後に醤油・味醂で味をつけたらできあがり。

出汁が染みて、とっても優しい味に仕上がっていた。大根よりも軽さがあって、いくらでも食べられる。ダイエットにもよさそうだ。
冬瓜はそのまま食べると何にも味がしなくて、瓜の爽やかさを期待するとがっかりするけど、その個性のなさが逆に他の素材、特に日本人に親しみのある昆布や椎茸の味を活かすのだ。全体の95%が水分だというから、味が染み込みやすいのだろう。少しだけ冬瓜の魅力がわかったような気がした。
引用文はこちらの本から。日本の年中行事や料理についての面白い話が満載だ。

冬瓜料理をあと何回作れば、「あるかなきかの冬瓜の味」が「しみじみと分かる」ようになるのかな。やはり回数の問題ではなくて、酸いも甘いも知って初めて、冬瓜の味がしみじみ美味しいと実感できるのだろう。主張しない味が心にも身体にも染みわたる時がある。冬瓜って、きっとそんな優しい野菜なんだなと思った。
冬瓜という名前の由来は「切らずに冷暗所で保存すれば冬までもつから」ということらしい。夏に「冬」という言葉を聞くだけで、ちょっと涼し気でうれしくなる。冬までもつなら、冬瓜をもう少し買っておこうか。これだけ暑い日が続くと、秋を通り越してもはや冬が恋しい。
自分でも忘れていたけど、前に冬瓜のスープを作っていました(笑)