見た目はごつごつしていたり、一か所飛び出ていたりして、なんかあんまり美味しそうには見えないザクロ。でも割ってみると、びっしり詰まった深紅の粒が顔を出し、その美しさに目を見張る。
それもそのはず、ザクロは神話や聖書にも登場するくらい、大昔から人々に愛されてきた果物なのだ。まるで宝石のような美しい赤い粒は人々を魅了し、その数の多さから「豊穣の象徴」とされてきた。
そんなザクロだが、私はほんの数回しか食べたことがない。とにかく食べにくいのだ。小さな粒の中に種があるので、食べるたびにいちいち吐き出さなければならない。このザクロの種のことを「木片のような食感」と書いていた本があったが、まさに言い得て妙。種と言うより小さな異物のようで「ああ、種さえなければ~」と思うばかりだ。
それでも続く文章には「種を吐き出すべきか飲みこむべきかというジレンマを帳消しにするだけの魅力がある」とザクロを礼賛している。やっぱり唯一無二の存在感を持つザクロは魅力的だ。
今回は巷で人気のあるザクロ酢を作ってみようと、ザクロを4個購入した。1個の中に数百粒は入っているというが、なるほどその通り、粒を全部取り出すのは大変な作業だ。あちこち果汁は飛ぶし、気がつけば指先も真っ赤っか。
用意するのは、氷砂糖とリンゴ酢。
消毒した瓶にザクロの粒と氷砂糖を交互に詰めていく。
最後に上からリンゴ酢をかける。1ヶ月ぐらい漬け込んで、濾したらザクロサワーのできあがり。炭酸で割って飲んだら美味しいだろうな。今から楽しみだ。
さて、ずいぶんとザクロが余ってしまったので残りはジュースにすることにした。ミキサーで混ぜてから濾すか、ジューサーで一気に搾るか迷う。以前庭のチェリーをジューサーで搾ったら、バキバキっとものすごい音がして驚いた。説明書を改めて読んだら、種のある果物はNGだったのだ。ジューサー、壊れなくてよかった。
ザクロの種は小さいから大丈夫だろうとジューサーにかけたら、あっという間にザクロジュースができた。果汁100%でものすごく美味しい!色がとってもきれいなのでジュースで飲んじゃうのはもったいなくて、いろいろ作ってみた。
まずはザクロ粥。前に作った時は最初からザクロの果汁を入れて炊いたので、色がイマイチだった。今回は炊き上がり直前に果汁を混ぜてみたら、きれいに仕上がった。
いつものお粥がなぜか高貴な雰囲気のする食べ物に早変わり。やっぱりザクロって上品な美しさがあるなぁ。フルーティなお粥も意外とイケる。
そしてこのきれいな色を活かして、ゼリーも作ってみた。先に薔薇茶を煮出しておいて、そこに寒天を溶かし、ザクロジュースを加えて固める。バラ+ザクロでこちらも上品に仕上がった。
味ももちろんだけど、バラの香りときれいなピンク色の相乗効果で、とても優雅な気分にしばし浸ることができた。癒しのザクロゼリー。
ザクロは紀元前3000年の昔から、既に中東で栽培されていた。のどの渇きを潤す果汁たっぷりの滋養源として、砂漠の隊商は何世紀にもわたり、この肉厚な果実を旅に携行した。(「メディカルハーブ事典」より)
旅のおともにザクロって、なんかカッコいい。いろいろ作ってはみたけれど、果実はやっぱりそのまま食べるのが一番なのかもしれない。
でも種が面倒なのよ~!
「世界の樹木をめぐる80の物語」という本の中に、ザクロについての面白い文を見つけた。「一心不乱に果実を食べることには、なんらかの心理的な利点があるかもしれません」だって。
確かにあの小さい粒を食べ始めたら、途中でやめられなくなるかも。一心不乱に数百粒食べ続けたら、心理的にどうなる?