お刺身には必ず添えられている青紫蘇。抗菌作用が強く、食べ物が腐るのを防ぐ効果があるという。その青紫蘇について調べていたら、興味深いエピソードに出合った。
昔、中国の有名な華陀(かだ)という医者が、カニによる食中毒で死にかけていた若者に紫の薬草の葉を煎じて飲ませたところ、たちまち元気になり瀕死状態から蘇った。そこから「命を蘇らせる紫の草」という意味で、「紫蘇」という名前が付けられたそうだ。
こういう言い伝えを信じるか信じないかは人それぞれだと思うが、私は「やっぱりそうだったのか」と自然界の神秘に触れたような気がした。なぜなら私にはまさに「青紫蘇で生き返った」実体験があるからだ。
今からもう何十年も前、大学に入学したばかりの頃の話だ。親元を離れ、一人暮らしを始めた私は環境の変化によるストレス、食生活の乱れなどが重なって、起き上がれないほど体調をくずしてしまった。なんとか実家に戻ることができたが、病院の薬を飲んでもよくならず、10日ぐらい寝たきり状態が続いた。
ひどい下痢が続き、お粥も食べられない。お白湯をひと口飲んだだけでも、それがお腹を刺激してトイレに駆け込む始末。もう心身共に弱り切ってしまい、いよいよ入院かという時、藁をもつかむ思いで伝統的な民間療法を試してみた。「下痢を止めるには青紫蘇をミキサーでジュースにして飲む」というものだ。
母親に頼んで青紫蘇をいっぱい買ってきてもらい、ジュースにして飲んだ。青臭くてまずかった。でも不思議なことに、あんなにひどかった下痢が嘘のようにピタリと止まった。そして少しずつお粥が食べられるようになり、回復していった。まさに「命が蘇った」感じで、青紫蘇に救われたのだ。
その時の経験から、私は薬草、ハーブ、自然療法に惹かれるようになり、今に至っている。
青紫蘇のジュースは今でもよく作っている。お気に入りはスイカとの組み合わせだ。暑い夏にはスッキリして最高。
1人用の小さいミキサーで飲みたい時に気軽に作る。甘酒をちょっと加えると青臭さが無くなり飲みやすくなる。
きれいな色とは言い難いので、見た目はちょっと、、。でもボヤッとした心身に活を入れてくれる滋養ジュースだ。
他にももう一品作ってみた。青紫蘇好きにはたまらない、青紫蘇の野菜巻き。胡瓜、人参、茗荷、新生姜を千切りにして青紫蘇で巻き巻きするだけ。
たれは、醤油・ごま油・酢・ラー油・きび砂糖を混ぜたもの。お酢を入れるとさっぱりする。
紫蘇は縄文遺跡から種が見つかっているそうだ。まあ、そんな太古の時代からと、驚いてしまう。
紫蘇には赤紫蘇と青紫蘇の2種類あるが、赤紫蘇も今が旬、日本人のソウルフード梅干し作りには欠かせない。赤梅酢やゆかりも副産物として一緒にできるのでうれしい。
そして今年ももちろん作りましたよ、赤紫蘇ジュース。こちらは砂糖とレモンが入っているので飲みやすく(青汁のようではなく)すごく美味しい。大汗かいた後には最高で、夏バテ防止や熱中症対策にはもってこいのドリンクだ。濃縮で作っておいて、炭酸で割って飲むので長く楽しめる。
ところで、最近は青紫蘇のことをよく「大葉」というけれど、いつからそう呼ぶようになったのだろう。私が若い時は普通に「青ジソ」と言っていたけど。青紫蘇で救われた私としては、赤紫蘇も青紫蘇も「命を蘇らせる」紫蘇だから、大葉じゃなくて青紫蘇と呼びたい。
赤紫蘇ジュースの作り方はこちらに書いています。