今週のお題「小さい春みつけた」
旬の野菜は何でもおいしいけれど、苦みのある春野菜は格別だ。毎年この季節になると「そろそろ出てるかなぁ」と野菜の直売所を覗くのがなによりの楽しみ。
思った通り、菜花、グリンピース、クレソンなど、春を感じる野菜がいっぱい並んでる。今年も来たぞ、春!
中でも目を惹くのがそら豆だ。さやが大きくて、皮もついてるからいっぱい買っても実際食べられるのはほんの少しだけ。ちょっと残念だけど、そこがまた貴重で特別感を増すというものだ。
そんなそら豆をぎっしり詰めて春のキッシュを作ってみました。新タマネギやグリーンピースも入れて。
まずは生地作りから。一般的には薄力粉だけど、私は古代小麦のスペルト粉を使うからずっしりと食べ応えのある素朴なキッシュになるはず。ふるった粉に豆乳と菜種油を混ぜて、ひと塊になったら30分休ませる。
麺棒で薄く伸ばして型に敷いたら、タルトストーンを載せて10分ぐらい焼く。この手間を省いてしまうと生地が浮き上がってうまく焼けない。
生地が焼けたら、いよいよ中身を詰めていく。一般的なキッシュは牛乳、卵、バターなどで作るけど、ヴィーガンキッシュで欠かせないのはやっぱり豆腐。日本人のソウルフードである豆腐が洋風料理に大活躍するとは、お豆腐屋さんもびっくりじゃないかな。海外のシェフも豆腐チーズケーキを作るのだから。
水切りした豆腐にターメリックと片栗粉を混ぜて豆腐クリームを作る。
そこに炊いておいたもちきびと、炒めた玉ねぎを加えてキッシュのフィリングを作る。
キッシュにもちきびを入れるアイデアは、ずっと前に農文協さんの料理雑誌を見て感動してからマネさせてもらっている。斬新なレシピを生み出す人は本当にすごい。いろんな雑穀がある中で、もちきびはクリーム系によく合うのでクリームコロッケやグラタンを作る時に重宝する。粒が小さくて、色も黄色で可愛くて、なんか癒し系雑穀と思っているのは私だけかな。
さて、いよいよキッシュ作り。中身を詰めていく。
まずは焼いた生地の上に炊いたもちきびを敷く。その上にそら豆を敷きつめて、隙間にグリーンピースも詰めていく。途中ちょっとつまみ食い。塩ゆでしたそら豆おいしい~!
その上からフィリングを載せて、カラフルなミニトマトを飾る。余ったので生地無しの小さなココットも。オリーブオイルを塗ったらオーブンで20分ぐらい焼いて。
もう何十年も前のことだが、20代の頃にロンドンに語学留学していた。その時初めて知ったのがキッシュという食べ物だった。アップルパイのようなパイとも見た目が違うし、なんか野菜がぎっしり入っているみたい。オシャレな異国の食べ物に私は好奇心いっぱいでひとつ買ってみた。
ところがいざ食べてみると、当時からすでに菜食だった私には牛乳や卵の感じが強くて正直口に合わず、その後キッシュを買うことはなかった。ちょっと残念な想い出だ。
でも今はプロの料理家たちが、植物性の材料でおいしそうなヴィーガンキッシュのレシピをどんどん開発している。人間の創造力は無限大。豆腐がキッシュになるなんて、あの時は夢にも思わなかったけど、ヴィーガン本場のロンドンの街にも今は豆腐キッシュが並んでいることだろう。
さあ、そら豆のキッシュが焼きあがった。新タマネギやグリーンピースもたっぷり入った春のキッシュの出来上がり。
小さなココットも可愛く焼けたようだ。
食べ応えのあるキッシュなのでピクニックに持参して、桜の木の下でランチもよかったなぁ。開花までもう少し、ちょっと作るのが早すぎたか。
私の春はいつも食べ物からやってくる。次は菜花のケーキを焼こうか、それとも桜ドーナツにしようか。ずっと冬ごもりしていたのに、急にワクワクしてきた。それこそがまぎれもなく春がやってきた証拠だ。