9月17日は聖ヒルデガルト昇天の日。毎年ドイツで行われる昇天祭には世界中から多くの研究者やファンが訪れるそうですが、昨年も今年もコロナ禍ですからどんな状況だったのか。
今でこそ「ヨーロッパ最大の賢女、薬草学の母」と言われる聖ヒルデガルトですが、第二次世界大戦中、ヘルツカ博士にその著書が発見されるまで、なんと800年ぐらいの間その功績は埋もれていました。
軍医だったヘルツカ博士は修道院を使って負傷した兵士たちの治療に当たっていましたが、敗戦色が濃くなる中、薬が不足して困り果てていました。
そんな時、偶然そこにあったヒルデガルトのラテン語の医学書を見つけたのです。中世の薬草治療の世界。西洋医学の医者にはにわかには信じがたい。でも目の前の修道院の庭を見たら、本に書いてあるのと同じ薬草があふれんばかりに生えているではありませんか。
藁にも縋るような気持ちで、それらの薬草を使って傷病兵士たちに治療を施すと、抜群の効果があったのです。
「必要な時に私の教えは蘇るだろう」
聖ヒルデガルトはそんな言葉を書き残しているそうですが、まさにその通りのことが起こりました。
戦後になってヘルツカ博士は、300種類以上の薬草を研究した彼女の著書を英語に翻訳し蘇らせました。すると世界中でヒルデガルトルネサンスが巻き起こり、2012年にはローマカトリック教会から正式に「教会博士」と認められ、彼女は「聖」ヒルデガルトになりました。
さて話は変わりますが、スーパーに早くも栗が登場！
栗は聖ヒルデガルトが「100％健康に役立つ」「脳の働きが悪い場合は栗を食べなさい」と言っている食べ物ですから、昇天祭に合わせていただくにはぴったり。さっそく栗のスープを作ることにしました。
市販のペーストを使えば簡単ですが、やっぱりこの季節だけの自然の恵み。面倒臭がらずにゆでて皮を剥きましょう。
大変な栗の皮剥きも、毎年この時季だけ引き出しから登場する栗剥き器「くりくり坊主」を使うと楽ちん。
茹でた栗15粒、アーモンドミルク400㎖、アーモンドパウダー大さじ１、野菜ブイヨン小さじ１をミキサーでガーっと混ぜました。塩で味を整えて。
冷たくても美味しいのですが、小鍋で温めていただきました。せっかくですから、ヒルデガルトスパイスのガランガルとシナモンをかけ、ヒルデガルト推奨のハーブ、ミントを添えて。
一緒にいただいたクラッカーはスペルト小麦入りのものです。スペルト小麦もヒルデガルトが最高の穀物と呼んだものですから、昇天祭にはちょうどよかったと自己満足。
デパートの北欧フェアの際に購入したのですが、スペルト小麦だけでなく、ひまわりの種、オートミール、亜麻仁などがぎっしり詰まっていて美味しかったです。
久しぶりに食べてみると、栗ってやっぱり美味しいですね。豊穣の秋の始まり、食いしん坊の季節到来です！
余った栗で、甘いドリンクも作りました。こちらは甘酒、豆乳と一緒にミキサーにかけ、シナモンをふりました。栗と甘酒の自然の甘さが口の中に広がり、お腹に染みわたります。秋の夜長の読書のお供によさそうです。
修道院長であり、薬草家、女医、音楽家、ヒーラーなど、聖ヒルデガルトはたくさんの顔をもつスーパーウーマン。すごすぎて近寄りがたい印象がありますが、とても人間味あふれる方だったようです。
男性中心の階級社会の中で、王様や権力者にもひるまず抗議したり、修道院を解放して病に苦しむ貧しい人々を救ったり、自ら率先して行動を起こした人だったようです。
当時は女性に学問が許されなかった時代。ラテン語が読めない修道女たちが間違えてはいけないと、修道院のハーブ園も実用重視。「この一角は胃腸によいハーブ」「この辺は心臓によいハーブ」と、薬効別に植えられていたそうです。
「ミクロコスモス、マクロコスモス」
「中庸が大切」
「地球上の全てのものに癒しがある」
どれも今から900年も前の言葉とは思えないほど、現代に通じる言葉です。腸内環境を整える大切さまで語っていたというから、まさか腸内フローラまでわかっていた？ 時代に求められて、今彼女の叡智が蘇っているのかもしれません。
