ずっとヴィーガン暮らし

薬草学の母ヒルデガルトに憧れて植物療法を学んでいます

源氏物語で紫の上も食べた亥の子餅

学生時代に学んだ源氏物語。来年の大河ドラマ「光る君へ」が紫式部の人生を描くということで、予習も兼ねてまた源氏物語にチャレンジしている。若い時は「古文を読む」ことに苦労したけど、今はむしろ平安時代の暮らしに興味があるので、現代語訳の助けも借りながら楽しく読んでいる。

 

源氏物語にはいろいろな和菓子も登場する。まさにタイムリーなのが「亥の子餅」だ。平安時代には新米でついた亥の子餅を食べる宮中行事があり、亥の月(旧暦の10月)の亥の日、亥の刻に食べることで無病息災につながると信じられてきた。

 

源氏物語の第九帖「葵」の巻で、正妻である葵上と死別した光源氏は少女の頃に引き取って世話をしていた紫の上ととうとう結ばれる。折しも翌日は宮中行事「亥の子祝い」の日だった。紫の上のところには洒落た折り箱に入れた亥の子餅が用意されたが、それを見た光源氏は惟光に次のように言う。

この餅だけど、こんなにたくさん仰々しくしないで、明日の夕方に持ってきてほしい。今日は日柄もよくないことだし。(「源氏物語」角田光代訳より)

照れたように笑う光る君の顔つきから、惟光は何があったのかを悟った。指定された「明日」は二人が結ばれて三日目に当たるからだ。

平安時代の結婚は「三日夜餅」(みかよのもちい)と言って、男性が女性のもとへ続けて通い、三日目に二人で餅を食べることで婚姻が成立したという。(一夜限りでは単なる浮気とみなされるとか。)

 

婚姻の証として光源氏と紫の上が一緒に食べた亥の子餅。香壺の箱に入れて届けられたとあるが、いったいどんなお餅なのか。元々は新米をついた餅のなかに、小豆・大豆・ささげ・ごま・栗・柿などを混ぜたものだったが、今では老舗の和菓子屋さんが、それぞれオリジナルの亥の子餅を作っているようだ。

 

私もさっそく老舗の和菓子屋さん「鈴懸」へ行って、購入してきましたよ。

ウリボウの形に似せて、焼き目を付けた鈴懸さんの亥の子餅、胡桃入りでとっても美味しかった。

 

「亥の日」には囲炉裏や炬燵開きをする習わしもあるという。これは中国の陰陽五行説で「亥」は水性に当たり、火難を逃れると考えられているからだそうだ。

 

茶道でも「炉開き」の日には亥の子餅が茶菓子に用いられるというから、和菓子というのは単なるスウィーツにあらず、日本の伝統文化、日本人のさまざまな願いが込められているんだなと改めて感じた。

 

平安貴族たちに愛された宮中行事の和菓子と聞くと、とても雅なイメージがあるけれど、形がウリボウだなんてなんとも可愛らしい。そこで私も遊び心でオリジナル亥の子餅を作ってみた。

もち米を小豆の煮汁で炊いて、小豆で目を、背中には味噌を塗ってみた。餅というよりおにぎりみたい。一応、無病息災を祈って。

 

さて、紫の上と結ばれた光源氏は彼女にもう夢中で、今まで通っていた他の女性たちのところには足が遠のいてしまう。女性たちから恨みがましい手紙が届くのだが。

妻を亡くしたばかりでこの世がひどく厭わしく思えるのです。この時期が過ぎましたらお目にかかりましょう  (「源氏物語」角田光代訳より)

なんとも言い訳の上手な光る君さまだ。それにしても千年も昔の物語がこんなに面白いとは。恋のお話もいいけれど、私はお香や和菓子、植物などに注目しながら読んでみたい。

 

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