ずっとヴィーガン暮らし

薬草学の母ヒルデガルトに憧れて植物療法を学んでいます

杏の酵素シロップと漢字の話

ドライの杏はよく食べるけど、生の杏は今までお目にかかったことがなかった。それが道の駅で偶然見つけたので、うれしくて即購入!なんか完熟梅みたい。

 

ワクワクで買ってはみたものの、どう調理したらよいかがわからない。ジャム?焼酎に漬ける?結局いつも作っている酵素シロップにするのが一番無難かなと思った。

 

酵素シロップはもう10年以上いろんな素材で作っている。自然発酵させ、冷蔵庫で1~2年は平気で保存できるので、ドリンクはもちろん、ドレッシング、お菓子作りにと、とても重宝する。

 

さっそく同量の白砂糖で漬けていく。白砂糖は体に悪いと、いつも悪者扱いだけど、酵素シロップは果物の発酵を促し、単糖が多糖に変化するからむしろいいらしい。

毎回この砂糖の量にはドキっとするけど、砂糖が少ないとうまく発酵しないので、素材と同量ぐらいがいいという。上まで砂糖でしっかり覆ったら、1日1回手でかき混ぜて発酵を待つ。

さて発酵を待っている間に、以前から疑問だった「杏」という漢字について調べてみた。

 

あんずは「杏」か「杏子」か。女優の杏(あん)さんがデビューした時、私はてっきり「あんず」さんだと思っていた。(失礼しました!)果実のあんずは「杏子」とも書くけど、人の名前では「きょうこ」さんだ。「あんずこ」さんと読んでもすごく可愛いけど。

 

杏仁豆腐の「杏仁」は「あんにん」だけど、それを作るために入れる「杏仁霜」は「きょうにんそう」だ。なんか混乱するなぁ。「あんにんしも」って読んでたのは私だけ?

 

そんなモヤモヤを解決してくれたのが、こちらの本。

「漢字の植物苑」円満字二郎

この本は植物名に関する興味深い話が満載で、四季を通して歳時記のように解説されている。イラストもとっても素敵。

全部で72種類もの植物の漢字について語られているが、杏も「アンズの読み方に悩む話」というタイトルで取り上げられていた。

 

広辞苑には「あんず」の漢字表記として「杏」と「杏子」の2つが載っていて、「杏」は本来樹木の「あんず」を指し、「杏子」は果実を指すそうだ。

 

「子」には「ず」という音読みがあるから、「杏」の本来の読み方は「あん」が正しかった。元々「あんず」は実を指す言葉だったけど、のちに樹木も表すようになったので「あんず」は「杏」でも「杏子」でもよくなったという。

 

さらにややこしいのが、奈良時代から平安時代の初めごろに中国から伝わった漢字「杏」は「きょう」と読み、鎌倉時代以降に伝わった「杏」は「あん」と読むのだそうだ。

 

生薬の「杏仁」は「きょうにん」と読み、中華デザートの「杏仁豆腐」も「きょうにんどうふ」と読むのが本来の読み方らしい。広辞苑で「あんにんどうふ」を調べると「きょうにんどうふ」を参照せよと指示があるそうだ。

『広辞苑』クラスの大きな国語辞典はみな同様で、「きょうにんどうふ」が本見出しになっています

今ではみんな「あんにんどうふ」と言ってると思うけど、元々は「きょうにんどうふ」だったのですね。

 

さて2週間が過ぎ、シロップもいい具合に発酵しましたよ。

生の杏500gから結構な量のシロップが取れた。漉したので、とてもきれいなオレンジ色ならぬ「あんず色」だ。

濾した後の果実は梅だったら煮てジャムにするけど、杏はいい感じに柔らかくなっているので、このままでもいけそうだ。

漢字の謎も解けたことだし、さっそく「杏仁豆腐」(あんにんどうふ)を作ってみた。用意するのはアーモンドミルクと「杏仁霜」(きょうにんそう)と粉寒天。

 

できたての杏の酵素シロップをかけ、濾したあとの杏をのせて。タイムの花もちょっと散らしてみた。

砂糖なしでも杏のおかげで十分に甘くて美味しかった。

 

生の杏は傷みやすいので、なかなか普通のお店には出荷されないと聞く。今回は出合えて本当にうれしかった。それにしても「あんず色」とってもきれい。