初めて生のローゼルに出合ったのは一昨年のことだった。デパ地下で偶然見つけて、可愛らしい形、濃い赤い色、上品な佇まいに目が釘付けになってしまった。品名を見ると「ローゼル」とある。ああ、これがいつも愛飲しているハイビスカスティーの本当の姿かと感動した。(メディカルハーブの世界では観賞用のお花と区別して、ハイビスカスをローゼルと呼ぶことが多い)
最近ちまたではローゼルが流行っているらしく、ローゼルの講座やローゼルの利用法を紹介した記事などをよく見かけるようになった。クレオパトラをも魅了したと言われるローゼルだが、伝説のハーブがぐっと身近な存在になってきたのはうれしい限りだ。
ちなみにローゼルを愛する人をローゼリアンというらしいけど、私も生のローゼルに出合ってからはすっかりローゼリアンの仲間入りをして、せっせと干したり、種を植えてみたり。
まだまだ珍しい生のローゼルだが、今年も無事に買うことができた。
さて今年はこのローゼルで何を作ろうか。単品のジャムやシロップは前に作ったので、今回は女性の身体によいとされる無花果とレモンバームを合わせて酵素シロップを仕込んでみることにした。
レモンバームは大昔から「生命のエリキシル(不老不死の霊薬)」と呼ばれるほど有名な薬草で、カール大帝は修道院の薬草園にレモンバームを植えるように命じたそうだ。鎮静・強壮作用があり、また不安や不眠、ストレスの緩和によいとされる。イギリスの作家で造園家としても知られるジョン・イーヴリンはレモンバームについて「憂鬱を一気呵成に追い払う」と述べている。(西洋中世ハーブ事典より)
酵素シロップはもう10年以上前からいろいろな果物やハーブで作っている。初めは本とにらめっこで、けっこう真面目に取り組んでいた。まず発酵しやすいという理由で白砂糖を使う(なんか抵抗あるけど)こと。分量は果実の1.1倍にすること。手の常在菌が大切なので、必ず手でかきまぜる(逆に体調が悪い時は絶対に触らない)こと等々。
最近はてんさい糖を使ったり、スパイスを入れたりと、もっと自由に作っている。作り方は簡単で素材と砂糖を交互に入れて、一番上は砂糖で蓋をするように覆う。
少しずつ消毒した瓶に詰めていって。
きび砂糖と交互に上まで重ねていく。
最後にきび砂糖をたっぷりかけて、蓋をしたら(発酵するので密封はしない)毎日かき混ぜて、発酵を待つ。
1週間から10日ぐらいで、砂糖がすっかり溶けてブクブクと泡が立ってきたら完成だ。中身を濾して、シロップを保存瓶に移し、蓋をゆるめたまま冷蔵庫で保存する。
花梨とスミレの酵素シロップを作った時は、うっかり蓋をしっかり閉めて密封してしまい、大変なことに。蓋を開けた途端にポーンと大きな音がして、泡とともにシロップが大量に吹きこぼれてしまったのだ。発酵の力恐るべしと思い知った。
1週間でけっこう泡がたってきた。そろそろいいかもね。聖書にも登場する無花果、クレオパトラが愛したローゼル、不老不死のレモンバーム、なんだかすごい組み合わせだけど、どんな味に仕上がっているか楽しみだ。
ローゼルのシロップ、漉して完成!この2つの酵素シロップがあれば、寒い冬の喉ケア、冷え予防、憂鬱な気分の解消はばっちりでしょう。
さて、ローゼルが余ったので今度は甘くないお楽しみを。ローゼルはジャムやシロップのイメージがあるけど、意外と美味しいのが塩漬けなのだ。そのまま塩で揉んでおにぎりの具材にしてもいいし、お弁当の彩りに入れても鮮やかできれいだ。
今回は赤い色つながりで、ラディッシュと合わせてみた。
ただ塩で揉んだだけだけど、青紫蘇とごまを飾ればさっぱりサラダ風に。ローゼルの酸味が活きている。
生のローゼルの楽しみ方も毎年少しずつ増えてきてうれしい。ジャム、お茶、酵素シロップ、塩漬けと、他にどんな使い方があるかな。去年植えた種は失敗したみたいで出て来なかった。懲りずに今年も種を取ってあるので、もっと丁寧に取り組んでみよう。庭にローゼルなんて、考えただけでうっとり。