ずっとヴィーガン暮らし

薬草学の母ヒルデガルトに憧れて植物療法を学んでいます

世界でいちばん貧しい大統領が語るしあわせとは

ドキュメンタリー映画「ムヒカ」を観てきました。

 

2012年、ブラジルのリオ・デ・ジャネイロで開催された国連持続可能な開発会議(Rio+20)でのスピーチで一躍時の人になったウルグアイの大統領ホセ・ムヒカ氏。

 

その後、イギリスBBCがムヒカ氏の大統領らしからぬ質素な暮らしぶりを紹介し「世界でいちばん貧しい大統領」と呼ばれるようになりました。

 

日本でも絵本を始め、対談集など書籍がたくさん出版されていますが、なんとなく知っている程度できちんと読んだことはなく、映画を観て初めてその言葉の持つすごい力に驚かされました。

 

 映画の冒頭からいきなりこの言葉が胸に刺さります。頭の中にメモメモ~、忘れたくない!

 

「 私たちは発展するために生まれてきたわけではない。幸せになるためにこの地球にやって来たのだ

 

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今は80歳を超えたムヒカ氏。穏やかな語り口と優しい笑顔は、一見すると人の好いおじいちゃんという印象。でも、その暮らしぶりを見ると信念の人だということがわかります。

 

大統領になっても大統領官邸に住むことを拒み、以前から住んでいた郊外の小さな農場(「倒れそうな農場」BBC)に住み続け、移動にも大統領専用車などは使わず、1987年製の愛車に乗り続けています。

 

その理由についてインタビューで語っています。

 

「私は国民の多数派によって選ばれたから、多数派と同じ生活をしなければならない」

 

うわぁ~実にシンプルに語るけど、それを実践できる人は稀だ。権力に伴って高い収入を得ると「それにふさわしい生活を」と勘違いするのが人間だと思うけど。

 

映画でも、貧困層のための住宅建設プロジェクトにムヒカ氏が給料の8割を寄付したことが紹介されます。その建設現場を訪れ、工事を優しい笑顔で見つめる姿が印象的。

 

「世界でいちばん貧しい大統領」と言われても「私は貧乏ではない。質素なだけです」


映画『ムヒカ 世界でいちばん貧しい大統領から日本人へ』予告編

 

 弱者を助けるという信念は若い時から一貫していたようです。「世界を変えたい」と強く思い「格差のない社会と自由を夢見て」革命運動にのめり込んでいきます。

 

所属していたのは南米最強と言われた極左武装組織「トゥパマロス」で、銀行を襲って食べ物やお金を貧しい者たちに分配したので「ロビンフッド・ゲリラ」と呼ばれたそうです。

 

何度も逮捕され、最後は13年もの間、牢獄の独房に入れられ拷問を受け、精神的にも発狂寸前で、自分が叫び出すのを防ぐために口の中に石を詰めたという話も伝えられています。(参考「ホセ・ムヒカの言葉」佐藤美由紀) 

世界でもっとも貧しい大統領 ホセ・ムヒカの言葉

 

そんな想像を絶する 過酷な経験を経て、彼の人生哲学は生まれたのでしょう。リオ会議での胸を打つスピーチを抜粋します。

 

「西洋の富裕社会が持つ傲慢な消費を、世界の70憶~80憶の人ができると思いますか。そんな原料がこの地球にあるのでしょうか」

 

「どこまでが仲間で、どこからがライバルなのですか」

 

ハイパー消費が世界を壊しているにもかかわらず、高価な商品やライフスタイルのために人生を放り出しているのです」

 

「水源危機と環境危機が問題の源ではない。根本的な問題は私たちが実行した社会モデルなのです」

 

 そして昔の賢者のことばを引用しています。

「貧乏な人とは、少ししか物を持っていない人ではなく、無限の欲があり、いくらあっても満足しない人のことだ」

 

 彼は重要な外交の場でもいつもノーネクタイ。ネクタイは「政治家がウソを隠すためのもの」「人生を複雑にするだけで何の役にも立たない布」だそうです。こんなところまで自分スタイルを貫いているんですね。

  

リオ会議でのスピーチはこちら↓ 


世界でいちばん貧しいムヒカ大統領によるリオ会議(Rio+20)スピーチ

 

 来日した時に、本人の強い希望で広島を訪れ、次のように語ったことはご存知の方も多いかもしれません。

 

「日本に来ても広島に来なかったら、それは日本の歴史に対しての侮辱だと思います。人類に対しても。それと同時に名誉なことで義務だと思います」

 

心を鷲づかみにされた言葉が多すぎて紹介しきれませんが、一番心に残ったのは「種を蒔く」という考え方でしょうか。一字一句は思い出せませんが大体こんな内容。

 

風や鳥、自然は色々な物を運ぶ。人間は考えを運ぶことができる。私は世界を変えたかったけど、今は家の修理をしている。でも、80を過ぎた今も種を蒔き続けている。

 

 「考えを運ぶ」というのは素敵な言葉ですね。地球に想いを馳せても、目の前にはやらなければならない現実がある。取り合えず夕飯を作ることだったり。それでも小さな種を蒔き続ければ、どこかに落ちたり運ばれたりして、必ず伝わって行く。

 

政治家ってこういう人のことを言うんだと感じました。強い信念とリーダーシップ。加えて人を惹きつける人間的な魅力。ご本人がおもしろいことを語っています。

 

「政治の世界で探すべきは大きな心と小さな財布の人物です」