菜食は人づき合いが大変
自分の食の嗜好について敢えて人に言う必要などあろうか。と、思いつつも一筋縄ではいかないのが現実だ。社会生活を営む以上、誰かと一緒の食事や会食の場は毎日のようにやってくる。
40年間もヴィーガン暮らしを続ける中で、初めから
「実は菜食なので」
「お肉はちょっと苦手で」
「牛乳・卵も食べないんです」
などと言っていたわけではない。それほど親しくもない相手に下手に'ベジであること'をアピールして「アレルギーか何かですか?」と申し訳なさそうな顔で聞かれると、「別にそういうわけでもないんですけど、、」と話の展開が面倒なことになる。
私お肉食べないんで、と言った人がいた
30年も前のことだが、職場でマクドナルドのハンバーガーを差し入れにたくさん買ってきてくれた人がいた。
みんな歓声をあげて喜んでいたが、私は一人
「うゎー困ったなぁ、でもせっかく好意で買ってきてくれたんだし、ここは頑張って食べなければ」
とみんなと一緒に食べながら「パンがやわらかくて美味しいですね」などとつい言ってしまい、自己嫌悪になっていた。
その時Aさんが
「私お肉食べないんでごめんなさい」
とはっきりとした声で言ったので、頭をガツンと殴られたような気がした。
「Aさんもお肉食べないんだ」という発見ではなく「えーそんなこと言っていいんだ」という驚きだった。私にはまだそんな勇気も覚悟もなかったから。
自分の本心を隠して周りの人たちに合わせてしまった場合の後悔は
「自分に正直でなかった」
「自分を大切にできなかった」
というもの。
逆に「私お肉食べないんで」と言って場の雰囲気を気まずくさせてしまった場合の後悔は
「場の空気を壊すほど自己主張してよいものなのか」
「周りから浮いてしまった」
というもので、こちらも日本社会ではちょっと厳しい。
最近は肉を食べない人も増えてきたので「お肉食べません」はいいかもしれないが、シュークリームの差し入れだったらなかなか断りきれない。女子会で一人だけ最後のスウィーツを食べないのは場の雰囲気を確実に壊す。
尽きないヴィーガンの悩み
最近の私は、これからも付き合いが続きそうな人たちには最初の食事の場で
「お肉はちょっと苦手で」
と言って、自分はこういう人だと敢えてラベルをつけることにしているが、
それに続いて
「じゃお魚は食べられるんですか?」と聞かれ
「実はお魚もちょっと」
「えー、じゃ卵や牛乳は?」
「うーん、実はあんまりね」
と正直に言ってしまったら最後、大変な質問攻めに遭う。
必ず聞かれるのが
「タンパク質はどうしてるんですか?」
「家族の食事はどうしてるんですか?」
「きっかけは何だったんですか?」
「宗教か何か?」
この時いくら質問攻めに嫌気がさしても
「スティーブ・ジョブズだって、マドンナだって、坂本龍一だってベジタリアンですよ」などと決して言ってはいけません。
世の中にはあらゆる分野においてマイノリティが存在するが、一人で黙々と変わった趣味をやるならともかく、食事は人づきあいの大切な場なのでできれば雰囲気を大切にしたい。
しかし、食べることは生きることの基本、まさに生き方に関わる自己選択の問題なので、もっと自由に、もっと自分らしく、好きなものを美味しく食べたい。
お願いだからあんまり質問しないでくださいね~♡