ずっとヴィーガン暮らし

薬草学の母ヒルデガルトに憧れて植物療法を学んでいます

バーナード・リーチと湯町窯のエッグベイカー

日用品で長年大切にしているものは何かと聞かれれば、湯町窯のエッグベイカーがすぐ浮かびます。

 

こちらはもう20年も前に、デパートの民芸品売り場で一目惚れして購入しました。エッグベイカーという名前が付いていて、一人用の目玉焼きを直火で作れるということでした。

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蓋を開けると中には素敵な模様が描かれていて、受け皿の渦巻模様の色合いも優しくて素朴な印象です。

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フライパンじゃなくて、こんな陶器で目玉焼きを作るなんて、オシャレでなんと贅沢。日常生活を楽しむ人には素敵な逸品になるだろうなと感じました。

 

当時からヴィーガンだったので、目玉焼きには縁がないしと一度は諦めて帰りかけたのですが、ぽってりとしたフォームとその優しい色使いが頭から離れず、1点ものだったので売れてしまっては後で後悔すると思い、売り場まで急いで戻って購入しました。

 

説明書を読むと、島根県の湯町窯というところで作られたものでした。

 

 その後、湯町窯のことは忘れていたのですが、ある時雑誌に特集が組まれていて、このエッグベイカーはイギリスを代表する陶芸家、バーナード・リーチがスリップウェアという技法を直接指導して生まれたものだと知ったのです。

 

だから他で見ないような、どこかイギリスのカントリーサイドのような雰囲気が感じられたのかと納得がいきました。

 

イギリスと言えば、手仕事の復権や日用品の美を掲げるウィリアム・モリスの「アーツ・アンド・クラフツ運動」が有名ですが、バーナード・リーチも柳宗悦らと民藝運動を牽引し、日用品の中にある美しさ「用の美」を提唱しました。

 

その時から、湯町窯をいつか訪れてみたいなぁと思うようになりました。

 

夢が実現したのは8年後。子供たちからは「なんでそんなとこに行くの?」と聞かれながらも窯目的で出かけた島根県旅行。1922年創業の湯町窯は宍道湖の南岸の玉造温泉の近くにありました。

 

やっぱり窯を訪れて直接手に取ってみると、どれも手仕事のあたたかみが感じられ、あれもこれもと欲しくなってしまいました。再度来ることはないだろうと、欲張って買い込んだ結果がこちらです(笑)

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ピッチャーと小皿

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一人用のお粥鍋

直火にかけられる一人用のお粥鍋はとても重宝します。蓋には吹きこぼれ防止の穴も開いていて、裏返すとお馴染みのスリップ模様が描かれています。お粥を食べる時に梅干しなどを載せる小皿にもなります。

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他にも大皿やグラタン皿まで買い込みましたが、これくらいにしておきます。

 

今回湯町窯をご紹介したのは、ブログのお仲間であるid:nonsugar23さんのこちらの記事がきっかけです。大切にされている萩焼きの急須のお話がとても素敵でした。「レトリロさんの長年大切にしているものもご紹介ください」とお声がけいただいたので、書いた次第です。

nonsugar23.hateblo.jp


ウィキペディアによると、バーナード・リーチは幼少期に4年間、京都に住んでいたそうです。ロンドンの美術学校時代に、日本から留学中だった高村光太郎と知り合い、日本に共感郷愁を抱いて再来日したそうです。

 

どんな人物なのか興味が湧いて「リーチ先生」(原田マハ)という本を読みました。気さくなお人柄で「リーチ先生」と親しまれ、湯町窯だけでなく大分県の小鹿田焼とも関わりが深かったようです。

 リーチ先生 (集英社文庫)

 

購入から20年も経っているエッグベイカー。目玉焼きじゃなく、豆乳グラタンなどで使っています。さつま芋やカボチャで作る蒸し焼きプリンにもよく合います。

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 今ではこういった地方の焼き物も通販で簡単に手に入る時代になりましたが、やっぱり購入した時の想い出があると違いますね。同じエッグベイカーでも、デパートで1点ものとして出合ったから特別なご縁を感じます。

 

使っていればいつか割れてしまうかもしれない。でも美しいものを棚に飾って眺めていては「用の美」じゃない。使ってこそ活きるものなので、これからもどんどんエッグベイカーを使っていきたいと思っています。