修道院のお菓子をヴィーガンヴァージョンで作ってみようと思ってから、ずいぶん間が空いてしまいました。気を取り直して、今回は「修道院のお菓子・その2」です。
ヨーロッパではクリスマスにスパイスクッキーとグリューワインを楽しむ伝統があると聞きます。
実はそのどちらも、中世最高の賢女・薬草学の母と言われる聖ヒルデガルトが始めたものだと言われています。中世の時代は水が汚かったので、薬草はお茶ではなくワインで煮込んだんですね。
スパイスのたっぷり入ったヒルデガルトクッキーは「喜びのクッキー」または「幸せのクッキー」と呼ばれ、修道院で長く作られ続け今に至っています。日本でも買うことができるんですよ。
ちなみにスピリチュアルの方々はこのヒルデガルトクッキーを「波動のクッキー」と呼んでいるようです。確かに喜びで満たされると波動も上がりますよね。
私も一度は作ってみたいと思いつつ、正式なレシピ(1157年のPhysica)では卵・バターをたっぷりと使用します。伝統あるクッキーだから勝手にヴィーガン仕様にアレンジするのはどうかなぁと、、。
ところが、ヒルデガルト講座の先生が「喜びのクッキーなんだから、あなたが幸せならいいんですよ。どんどんアレンジしてください」とおっしゃったので、今回初めて作ってみることにしました。
ただし、スペルト小麦を使うこととシナモン・ナツメグ・クローブの配合だけは守ることにしました。なぜならこのクッキーはもともと病人のために考案されたものだからです。(それを言ったらヒルデガルトのレシピはすべて病んでいる人を健やかにするためのものですが)
ヒルデガルトは「スペルト小麦は穀物の中で最も価値がある」と言っています。まるで軟膏のようであると。(優しく癒してくれるので)そして体を温め、神経を安定させるスパイス類がたっぷりと入っています。
病人は食欲がなかったり、きちんと食事がとれなかったりします。そんなときに栄養価の高いクッキーを1枚でも齧ることができるようにと、このクッキーが考案されたのです。現代のお菓子感覚とは違うのですね。
<喜びのクッキー / ヴィーガンヴァージョン>
スペルト小麦100g・アーモンドプードル20g・BP小さじ1をボウルに振るい入れます。
別のボウルにメープル50g、菜種油30g、てんさい糖10gを入れ泡だて器でよく混ぜます。
両方を合わせたら、ナツメグ・シナモン各小さじ1、クローブ小さじ1/4も加えよく混ぜます。
ひとまとまりになったら、ラップに挟んで麺棒で伸ばします。
ハート型で抜きます。喜び・幸せのクッキーというと、やっぱりハート型かな。
160℃のオーブンで15分焼きました。スパイスのいい香り~
ローズマリーのベッドに載せて完成!うーん確かに、作っている間ずっと幸せ気分でした。
食べてみたらサクサクして、スパイスの香りも効いていて美味しかったです。止まらない、、クリスマス前になくなってしまいそう。修道院ではきっとたくさん作って、たくさんの人を幸せにしたんでしょうね。
若かりし頃、お菓子作りが大好きだったので、世界のクッキーモールドやロールピンを一生懸命買い集めていましたが、今は完全に眠ったままで出番がありません。正直使いこなせなかったから眠っているのですが。
生地が少し余ったので、白い陶器の型を久しぶりに取り出して焼いてみることにしました。凹凸があるとくっついてしまい、うまくいかないことが多いのですが、、。
なんとかきれいに剥がれてクリスマスクッキーっぽいものができました!
お菓子作りの醍醐味は「焼いている時間」にあると思います。バタバタと手を動かして作っている時間はそのことに夢中ですから、かなり集中しています。
それがオーブンに入れた瞬間から、ふーっと解放され「待ち時間」が始まります。やることはやった、後は野となれ山となれといった妙に安らかな心持ちになれるのです。
待っている間は何もしなくていいのですから、目を閉じているだけで心の平穏がやってきて、まるでお菓子瞑想(笑)甘くて優しい香りが漂い、癒し効果も抜群です。あんまりぼやっとしていると焦がしたりするので、急に現実に戻ったりもしますが。
この喜びのクッキーはドイツでは「エネルギークッキー」とも呼ばれているそうです。刺激的なスパイスにはエネルギーを呼び覚ます働きがあるんですね。ただしヒルデガルトは「1日に2~3枚にしておきなさい」と言っています。美味しくても食べすぎ厳禁ですね。